10月 29

これからのホテル運営のキーワード「レベニューサイクルマネジメント」

日々の売上達成だけでは勝てない?

ありがたいことに、多くのホテル関係者の方々と対話を重ねる機会があります。レベニューマネジメントシステムは、直接的には料金設定業務の効率化や売上の改善を図っていくためのツールであることに間違いありません。ただ、広い視野と長期的な視点を持っている経営者ほど、別の意味をレベニューマネジメントシステムに見出していることに気づきました。

よくよく話を伺ってみると、彼らが目を向けているのは「継続的な仕組みづくり」でした。具体的には、MagicPrice導入への期待値について、料金設定の枠を飛び越え、「現場スタッフと支配人の共通言語にしたい」、「サービス向上の研修に時間をかけたい」といったことを語ります。なぜ我々にそういう役割が求められているのでしょうか。なぜ経営視点を持つ方ほど、日々の売上ではなく、継続的な仕組みづくりに目を向けているのでしょうか。

 

ホテル市場の先行き

ホテル市場の先行きに目を向けると自ずとその答えが分かります。ホテルの供給数は年々増加の一途をたどっている一方で、人手不足が顕在化しているのは周知の事実です。例えば、日本銀行がまとめた雇用判断人員指数を見ると、宿泊・サービス業界の雇用人員が圧倒的に不足していることが分かります。他産業においても、全国的に人手不足が指摘されてはいますが、それと比較しても、宿泊・サービス業界は圧倒的に人手不足だと考えられているわけです。

2019年9月の雇用人員判断予測(出典:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」)

 

過去のデータを見ても同様の傾向があり、引き続き人手不足の問題がホテル業界につきまとうことは想像に難くありません。そうなると、現在の人手不足が改善しないどころか、より少ない人数で増え続ける施設を運営していかなければなりません。この問題に対して、外国人労働者の受入といった方法で、とにかく人員を増やすことですべて解決できれば良いのですが、現実にはそううまくはいかないでしょう。ホテルの運営業務には支配人やレベニューマネージャーといった、すぐに代替できないポジションがありますし、人手不足はホテル運営の現場だけでなく、運営する法人側の問題でもあります。こういった観点から、「生産性」の向上はもちろん、業務を特定の個人に依存せずに実行できる体制を作る「再現性」が重要だといえます。

また、ホテル市場の拡大を牽引している観光市場も、決して安泰とは言い切れません。たしかに、2018年の訪日外客数はJNTOが統計を取り始めて以降、過去最高記録(3,119万人、前年比 8.7%増)となっており、純増していることは事実です。とはいえ、その訪日外客数の半数以上を占めているのは韓国と中国の2ヶ国と、少数の国からの観光客数に依存している状態です。つい最近では、日韓関係悪化によって、韓国からの観光客数が激減しているのはみなさんもよくご存知の通りかと思います。

長期的にみても、かつて発展途上国と呼ばれていた国々が資本を持つことで、観光業への投資が進み、国際観光市場における日本の地位が相対的に下がる可能性があります。政府が出している平成30年版観光白書を参照してみると、「空路又は水路による外国人旅行者受入数ランキング」において、日本は2,404万人でした。これは、世界で7位、アジアで2位となっており、昨年の世界で9位、アジアで3位から上昇しています。一方で、同じランキングにおいて、中国やタイ、韓国も近い順位に位置していますし、その後にマレーシア、インドネシア、ベトナムといった東南アジア諸国の名前が連なっています。今後これらの国の人気が上昇し、日本の国際観光市場における地位が相対的に下がるといった最悪のパターンを、経営者の方々は見据えています。

 

競争優位を保持する3つの視点

このようなお客さまとの対話や市場の考察を重ねながら、ホテル業界、なかでも中規模ホテルチェーンにおいては、次の3つの要素が重要だと考えています。

  1. 再現性:規模の拡大や人材不足に耐えられるかどうか
  2. 生産性:少人数で運営して最大限の成果を上げているかどうか
  3. 価値向上:着実にゲストに選ばれ続けるために戦略に基づいた投資ができているかどうか

私たちはこの考え方を「レベニューサイクルマネジメント」と名付けました。料金設定によって日々の売上を確保していくことは非常に重要です。とはいえ、本来”レベニュー”には不確実な要素が多く、完璧に管理できるものではありません。日々の料金設定に加え、レベニューを生み出すために日々どのように仕事をし、教育し、ホテル価値を高めるかという仕組み=レベニューサイクルをマネジメントすることで、継続的な成長を実現しようという考え方を私たちは重視しています。

レベニューサイクルマネジメント

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