10月 01

米ターゲットに学ぶ、リテール/小売のDX事例

Amazonの急成長に伴い、店舗を持つ旧来型の小売企業は軒並み大きな打撃を受けてきました。食品から家電まであらゆるものを揃え、配送含めたユーザー体験の改善、エンタメやスマートホーム製品といったサービスポートフォリオを拡充し続けるAmazonが旧来型の小売企業を駆逐する――そういった未来を考えていた方は少なくないと思います。

そんな小売業界において、ここ5年で株価が倍近く上昇、コロナ禍の四半期において店舗とオンラインともに売上高を増やし、オンラインに至っては195%増を実現するなど、躍進を続ける企業が存在します。

その企業は、USでディスカウントストアチェーンを展開するTarget。彼らもAmazonが台頭し始めた2010年前半までは、他の小売企業と同様に業績が低迷していました。しかし、デジタルを中心にユーザー体験への投資を続けることで、業績が回復するどころか、さらなる成長を遂げるエンジンを生み出すことに成功しています。この記事では、そんなターゲットのデジタル投資のポイントをご紹介します。

ターゲットのデジタル投資

組織への投資

元々Targetは、システム開発のほとんどを外部リソースで賄っており、多大なコストとプロジェクト遅延が頻発していました、また、2013年〜2015年ごろには、顧客のクレジットカード番号や住所などの個人情報が漏洩したり、サイバーマンデーでウェブサイトがクラッシュしたりと、明るくない話題が続いていました。

契機となったのは2015年、CIOであるMichael McNamaraの入社。Amazonが自社の強力な開発チームを持ってイノベーティブなサービスをスピーディに連発していたこともあり、開発リソースの内製化によって、ソフトウェアをベースとした競争優位の構築を目指し始めました。

そうして、多くが外部リソースで構成されていた10000名の開発チームは、自社リソース中心で構成される約4000名のチームへと変貌。その後、アプリやECの強化に本格的に着手することになります。

アプリでは、商品の購入はもちろん、店舗内の棚位置可視化や店舗での受け取り、買い物リストといったでの店舗連動の仕組み、ダイナミックプライシングによるオファーなどが実装されています。Google Playでの平均評価も4.3ポイントと好評のようで、アプリ開発が好調である様子が伺えます。

オペレーションへの投資

2017年になると買物代行スタートアップのShiptを買収し、彼らのサービスを通して当日配送サービスを開始しました。2020年には生鮮食品やアルコール飲料を当日配送サービスの対象に追加し、サービスの拡充を続けています。

また、SCM最適化を目的に、ロボット投資も進めています。倉庫においてロボット活用が進んでいることは広く知られている通りですが、店舗におけるロボット活用の検証も進んでいます。例えば、ロボットスタートアップであるSimbe Roboticsが開発するTallyは、在庫管理と棚卸しを自動化するロボットです。彼らの製品をTargetやWalmart、Giant Eagleといったリテール界の巨人が導入の検討を進めています。

店舗への投資

いくつかの小売企業が店舗を撤退させ、ECへの投資を進める中、Targetはデジタルの体験と店舗での物理的な体験の双方が重要だと判断し、店舗への投資を進めました。その一環として、データに基づいた内装デザインの変更や、オンラインと連動した注文ピックアップサービスを開始するための設備投資を実行。改装された店舗の平均売上高は1年目は2〜4%、2年目は平均2%を超えて伸びていると発表しています。

元CFOのCathy Smithはインタビュー内でこの投資判断について、消費者が物理的な体験とデジタル体験との境目を意識していないことからシームレスな体験を追求すること、ECやアプリをオンライン上のハブであるならば店舗をローカルのハブと捉えていることを説明しています。

そして、その「シームレスな体験」と「ローカルのハブ」を実現するための取り組みが、車内受取サービスであるDrive Upと店内受取サービスであるOrder Pickupです。ECで注文した商品を店舗内、もしくは店舗の駐車場で受け取れる仕組みです。特にDrive Upは、コロナ禍もあいまって、2020年Q2の成長率が作対比で驚異の700%となっています。

出典:ターゲット公式サイト

ターゲットから学べること

彼らから学べることは、個別の打ち手の秀逸さもさることながら、、デジタル戦略に基づいた各打ち手の連続性にありそうです。開発リソース内製化、アプリ拡充、スタートアップ買収、店舗への投資をはじめとしたそれぞれの打ち手は戦略の元に繋がっており、それが消費者にとっての「シームレスな体験」を生み出し、安さだけではない競争優位の源泉となっています。

これらを実現しているのは、デジタル投資やシステム開発に責任をもつCXOの裁量と判断、非IT領域のユーザー企業でありながらもエンジニアリングに優位性を見出した先見の明があるからこそではないでしょうか。

国内でも、ディスカウントストアを展開するトライアルカンパニーや家電量販店においてリテール×デジタルの取り組みが進んでいます。このコロナ禍で多様な購買体験が求められているからこそ、さらなる取り組みの加速に期待できそうです。

 

TEXT: 村田 剛士 株式会社空 広報・マーケティング

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