私たちのサービスと目指す変化

はじめに

はじめまして。世界中の価格を最適化し、”Happy Growth”な社会を目指す、株式会社空の松村です。

近年「ダイナミックプライシング」というキーワードが世の中に浸透しつつあります。これまで、航空券やホテルなどで限定的に利用されてきたダイナミックプライシングは、近年消費者と企業との新たな関係を探る試みとして注目を集め、鉄道や小売などの分野での利活用が模索され始めました。

実際に、2021年の「マーケティング・消費・技術トレンド」を調査した日経キーワードトレンドマップでも昨年からスコアを伸ばしています。

そんな中、私たち空もいわゆるダイナミックプライシング企業として紹介される機会が増えました。一般的にスタートアップ企業は「どういったテクノロジーに依拠しているか」つまりHowの文脈で語られることが多いため、こうした認知はある側面では正鵠を射ております。しかし、実のところ空は自分たちのことを「ダイナミックプライシング技術の企業」とはとらえていません。

では、空とはいったいどういった企業なのでしょうか?

空のビジネスモデル

私たち空は価格を最適化する技術と知見(具体的にはデータを元にしたプライシング自動化ソフトウェアとDXコンサルティング)を通じて、レガシー産業のビジネス構造をダイナミックにするお手伝いをしている会社です。

プライシング自動化ソフトウェアとは、需要予測や顧客動態に関するデータをもとに製品やサービスの価格設定を自動化するシステムをソフトウェアライセンスとして提供するもので、一般的にSaaSとして知られるビジネスモデルです。SaaSビジネスはその導入されるレイヤーによって、「業務支援ツール」から「経営支援ソリューション」まで様々な位置付けがありえますが、空の提供するサービスはこの両方にまたがる「経営戦略を現場の価格設定業務と連動させるSaaS」というポジションにあります。

そのため、「ツールを導入していただいておしまい」ではなく、お客様の事業にじっくり寄り添い、全体のPDCAサイクルを回すお手伝いとしてコンサルティングが必要になることが大半です。プライシングをコア領域としながら、企業やビジネスのダイナミック化を中長期的に支援していることになり、クライアントと業界の課題に合わせた機動力で、マーケティングやビジネスモデル、戦略レイヤーからの変革にコミットしています。

経済産業省が日本の産業界の構造改革のために公表した「2025年の壁」レポートにおいても、「データを活用しきれず、DXを実現できないため、 市場の変化に対応して、ビジネスモデルを柔軟・迅速に変更できないこと」が課題であると言われておりますが、価格設定に関するデータ活用を通じてお客様の事業全体に深く関わる私たちのソリューションは、結果的にお客様のDXをお手伝いすることとなります。

そのため、(多くのITコンサルティング企業とは異なり)最初から「DXしましょう」「AI活用に取り組みましょう」というお話をするわけではなく、業務と経営に必要とされるソリューションが結果的にDX的な成果を生み出してきました。

提供するソフトウェアとしては『MagicPrice』が主となります。これは、汎用性の高さを活かして集合知とコストメリットを生み、業界横断的にダイナミックプライシングの運用を担う水平型SaaSとなっています。この利用料金が空の主な収益であり、導入いただいたお客様の事業課題や戦略に寄り添ってカスタマーサクセスに取り組んでいます。ただ、最近ではお客様の至上命題が「DX」であることも多く、より上流の部分(新規事業立ち上げや既存事業のデジタル変革、人材育成など)からご一緒するプロジェクトも増えています。

『値決めは経営である』

さて、前章では、空の提供する『MagicPrice』を「経営戦略を現場の価格設定業務と連動させるSaaS」と紹介しましたが、これはどういうことでしょうか。

京セラ、DDIという国内でも最大手といわれる企業を立ち上げ、多くの方々が無理だと考えていた日本航空の再建を果たした稲盛和夫氏の金言に『値決めは経営である』というものがあります。

値決めにおいては、自分たちの製品・サービスが顧客にもたらす価値を正確に認識した上で、量と利幅との積が極大値になる一点を見つけ出す必要があります。ところが、変化の激しい現代においては、顧客に対して製品・サービスが提供しうる価値は刻々一刻と変化しており、昨日完璧と思われた価格が今日もそうであるとは限りません。

従来の価格設定においては、現場に一定の裁量が委ねられ、許される範囲で値上げ/値引きの調整が図られてきましたが、これにも限界が訪れつつあります。

第一に、現場の人間の「勘」に頼った判断では最適化しきれないほど顧客のニーズや価値観が多様化し、より速いスピードで需要が変動していること。
第二に、現場では価格を下げる方向の最適化ができても、価格を上げる方向での調整がしづらいこと。
第三に、現場の判断で行われた価格の調整結果が、経営層の意思決定に十分にフィードバックされないこと。

こうした背景から、企業経営の最重要イシューのひとつであるプライシングは、経営戦略と現場の業務との間で高速・高頻度のフィードバックループが回転して初めてワークするにもかかわらず、十分なPDCAが回らないことが常態化しています。

私たち空がMagicPriceを提供している理由は、こうした「プライシングのアタリマエ」を見直すことがレガシー産業の変革に最も梃子が効くと考えているからです。

プライシングでレガシー産業にダイナミズムを

日本の産業界において企業のデジタル変革=DXは最大の重要課題とされています。新型コロナウイルスの感染拡大にともない、この問題意識は一層強調されており、今や猫も杓子もDXを謳っています。ところが、DXは一筋縄で実現するものではないことも明らかになってきました。なぜならばDXとは「デジタルトランスフォーメーション」であって「デジタライゼーション」ではないからです。つまり、デジタル技術を用いて企業経営自体の体質改善を行うことが本質であって、単にこれまでデジタル技術を導入していなかったポイントに何らかのITツールを入れればよい、というものではない、ということです。

デジタル技術を用いた企業経営の体質改善とはなんでしょうか。より突き詰めて言えば「デジタル技術を用いない限り実現できない変化」はどこにあるのでしょうか?

それは、デジタルデータとして定量化・可視化された情報を、経営レイヤーと現場レイヤーとがリアルタイムで共有しあい、ダイナミックに経営判断と価値創造のPDCAを回せるようになることにあります。

何より「顧客への提供価値が時代の変化や多様化に合わせ続けていけるか?」つまり、ダイナミックで柔軟なサービス形態やタッチポイント(バリューポイント)を有しているか?ここにデジタル化の究極の目的があるはずです。

少しいやらしい言い方をすると、「大企業病」とも言われる過去の成功体験への固執、「イノベーションのジレンマ」と言われる破壊的イノベーションの軽視から脱却し、過去の自分たちの在り方を常に否定し続けるための説得材料をデジタル情報から導き出すことが、DXの本質でしょう。

プライシングは、この考え方を企業全体で共有し、体質改善に直結する「成功体験」を生み出すのに最も適した分野です。

第一に、プロダクト自体やプロダクトの生産ラインと比べて、変更にかかるコストが低くすみます。
第二に、価格の改善により企業の収益性向上に直結する成果を創出することが可能です。
第三に、現場と経営層が値決めという共通のテーマに取り組むことができます。

「価格を変動させるのに抵抗感がある」というマインドセットを打破することさえできれば、プライシングは市場ニーズとの対話を通じて最も最適化が図りやすいポイントとなり、同時に、収益という企業にとって最も重要な指標に影響を与えることが可能です。

DXというレガシー企業の前に立ちはだかる巨大で分厚い壁へ穴を穿つ”蟻の一穴”となるのがプライシングなのです。

Dynamic X=あらゆるものをダイナミックに

先述のようにDXの目的を「顧客への提供価値を、時代の変化やニーズの多様化にダイナミックに合わせ続けられること」とした場合、DXのD=デジタルはあくまで手段にすぎないことが見えてきます。私たち空は「デジタル」を越えて「ダイナミック」であることを重視しており、自社の働き方や組織運営にもダイナミック性を反映させています。

なぜダイナミック性が重要なのでしょうか。

いま、私たちの暮らす社会や各業界では、ニーズとアセットが適切にマッチングしておらず、一方で渋滞が、一方で廃棄が起きてしまっています。「足りてない!」と言いながら既にあるものを有効活用できていない。フードロスや空き家問題、幼稚園不足、人材不足など、こうしたムラ・ムダ・偏りは挙げ始めればきりがありません。

このようなムラ・ムダ・偏りが生じる根本的な原因は、従前の社会が「硬直的」であることを一部称揚してきたことにあります。硬直的であるということは、変化の緩やかな時代においては安定した成長や精度の高い事業計画の原動力となります。働き方やキャリアプラン、業務マニュアル、ひいては休日の過ごし方まで、定型化させることでムダを減らし規模だけを追求することが勝ち筋とされてきました。

しかし、人口減少や価値観の多様化、テクノロジーの指数関数的な進歩、持続可能性の模索といった昨今の時代の要請に、こうした硬直的な産業構造は耐えられなくなりつつあります。これは新型コロナウイルスの感染拡大による事業環境の急変によって浮き彫りとなりました。

有限な資源やアセットを最大限有効活用して収益力を上げなければいけないこれからの時代、そして事業環境や顧客のニーズが移り変わる時代において、企業が獲得すべきはあらゆるレイヤーにおけるダイナミック性です。

私たち空は、レガシー産業がダイナミック性を獲得するために、プライシングという最もレバレッジの効く領域を中心に、即効性かつ将来性のある変革支援を行うことのできるパートナーとして、関わる皆様全員との”Happy Growth”を目指してまいります。

2021年4月
株式会社空 CEO 松村大貴